海の恵みに抱かれた幸多き国、歯舞。

 根室半島、歯舞。

 群青にうねる太平洋にひらけた野趣豊かなこの地域は、わが国有数の昆布のメッカ。

 豊潤な海洋の恵みが肉厚のその身にぎっしりと詰まった味わいは、数ある昆布のなかでも特に上質品と称され、御家庭から専門店まで多くの方からご愛顧を頂いています。


そのおいしさに理由がある「歯舞昆布」
 ひとくちに昆布といってもその種類はさまざま。利尻や日高など特定の地方で採取されるものもあります。歯舞で水揚げされる昆布は、主になが昆布、あつば昆布、猫足昆布と呼ばれるもの。豊潤な太平洋と厳寒な風土、さらに独自の潮流の影響から、発育が非常によく、またビタミン・ミネラル・ヨードをたっぷり含んだ奥深い味わいが特徴となっています。

 特に昆布の旨味成分「マンニット」(表面に付着する白い粉)が豊富で、干し上がった製品を一目見るだけでその質の高さをご理解いただけることでしょう。

 昆布は、太古から日本人好みの風味と味を兼ね備えていることから、ご利用いただける料理の幅も広く、その味わい方も多彩です。


昆布は海のベジタブル。
現代人に不足がちなミネラルの宝庫です。
 人間に必要な栄養素は”炭水化物””脂肪””タンパク質”の三つです。 昆布には脂肪と炭水化物はほとんどゼロといっていいでしょう。
 しかし、なぜノーカロリーの昆布が健康食として注目されているのでしょうか。
 それは昆布には人間に必要な良質なミネラルが豊富に含まれているからです。
 海水には陸地から流れ込んだ45種類ものミネラルが含まれているのですが、海中で育つ昆布にはその全てが含まれているのです。
 昆布が含むミネラルは、体の抵抗力を増進する”鉄分”、心臓の働きを正常に保つ”マグネシウム”、鉄とともにヘモグロビンをつくる””、細胞の成長と増殖に欠かせない”亜鉛”などが含まれており、健康な体を維持するために必要なものがすべてそろっているのです。

 昆布と牛肉と牛乳の
 栄養素比較

カルシウム 昆布は牛肉の142倍、牛乳の7倍
ミネラル 昆布は牛肉の19倍、牛乳の23倍
鉄分     昆布は牛肉の2倍、牛乳の39倍
ビタミンA 昆布は牛肉の17倍、牛乳の39倍
ビタミンB1 昆布は牛肉の7倍、牛乳の16倍
ビタミンB2 昆布は牛肉の2倍、牛乳の3倍
ビタミンC 昆布は牛肉の13倍、牛乳の3倍

食べるだけでからだにうれしい
昆布の効能
 昆布に含まれている食物繊維は、アルギン酸が多く、これらは消化しにくい成分であり、腸管の中でナトリウム(食塩)や、腸内のコレステロール、糖分などを吸着して、体外に排出するはたらきがあり、高血圧症、動脈硬化、糖尿病の防止に役立っています。

 また、食物繊維は腸壁を刺激し、腸の運動を活発にする作用があって、それにより便秘を防いだり、口から入る発ガン物質なども腸から早く追い出してしまうので大腸ガンなどの予防にもなるのです。

 昆布は、海の栄養分を充分に吸収し、人間の健康や美容に必要な要素である、ビタミンや、ミネラルが豊富にバランス良く含まれていて、しかも極めて低カロリーであり、まさに昆布は、健康美の基礎といえるでしょう。


ちょっと一息
毎年11月15日は何の日?

 世間一般では11月15日は「七五三」の日ですが、実は昆布の日でもあるのです!
社団法人日本昆布協会では、昭和57年より「七五三」の日である11月15日を毎年『昆布の日』と定めて様々な行事を行っています。

 古くから子供たちの健康と成長を祝う「七五三」。この日に栄養豊かな昆布を食べて頂きたい。
「太陽の光を吸って、驚くほどの早さでスクスク育つ昆布のように、子供たちも育ってほしい。」 そんな願いもこめられています。

 また、7〜9月に収穫された昆布が消費地に出回り、消費者の口に入るのもこの時期です。11月15日の『昆布の日』には、生産者、消費者ともに自然の恵みを喜ぶ収穫祭的な意味合いも込められています。


昆布のことがよくわかる
歯舞昆布図鑑
 なが昆布

 なが昆布はその名の通り非常に長い昆布で、最も生産量が多く、主に加工原料として出荷されます。通常の時期より早く採取したなが昆布の葉はたいへん柔らかく、煮物や昆布巻などに使われる「早煮昆布」としておなじみです。また、いちばん根に近い部分で(元)と呼ばれる「早煮元昆布」は、栄養素が最も高く人気もありますが、数量が限られた貴重品です。夏時期に採取した根元の部分はおなじみの「だし昆布」になり、風味豊かなだしがとれ、佃煮や角煮には欠かせません。
 あつば昆布

 なが昆布と同様に採取される代表的な昆布で、肉厚で幅広く、大衆的な加工原料として出荷されます。塩昆布や酢昆布などに用いられるほか、九州では漬け物に使ったり、粉末をうどんに混ぜて食べたりもします。「早煮あつば昆布」は通常の時期より早く獲れる2年生の昆布で、実が厚く、柔らか。甘味があるので昆布巻には最適です。夏時期に採取した根元の部分を一晩コップに浸したエキスを飲むと血圧を下げる効果があるといわれています。
 猫足昆布


 根の部分が猫の足に似ていることからこの名が付けられており、大衆的な加工原料として出荷されています。4〜6月にかけて旧葉が脱落する事を「子別れ」と呼び、海岸に流れ着くのを拾い集める風景は道東地方の春の代表的風物詩です。晩秋に採取されたものは’マンニット’という旨味成分を多く含み、とろろ分と甘味に優れ、とろろ昆布やおぼろ昆布などに適し、関西・中国地方では細く刻んでなっとうこんぶとして食べられています。


昆布の上手なだしのとり方
 水洗いを避け、軽くしぼったふきんで表面をふく程度にします。
(表面に付着している白い粉は、マンニットという旨味成分ですので落とさないようにしましょう。)
次に、水に2〜3時間つけ込みそのまま火にかけ、沸騰直前に取り出します。
以上でおいしく上品な昆布のだしがとれます。


歯舞で水揚される昆布のだしとしての特徴
なが昆布 ほのかな甘味のあるだし汁が取れます。
あつば昆布 香が良く、風味のあるだし汁が取れます。
猫足昆布 上品でコクのあるだし汁が取れます。


昆布ロードとその歴史
 書物の記録などによると、昆布は7-8世紀頃から蝦夷地(北海道)から、東北地方へ運ばれ朝廷に献上されたと書かれています。

 戦国時代には、手軽に食べられる保存食として、戦いに備えて携帯しておりました。
 室町時代には、福井県まで船で運ばれるようになり、江戸時代に入ると「越中の薬売り」によって北前船で薩摩藩へ運び、やがては中国へ伸びた昆布貿易をつなぐ役割を果たしていたのです。

 この昆布が運ばれた道を「昆布ロード」と呼び、昆布の食文化が生まれていきました。長寿日本一の沖縄は昆布消費量日本一でもあり、様々な野菜や豚肉を一緒に調理して、たくさん食べる習慣によって栄養のバランスをしっかりと保っているのです。
   昆布ロード
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 歯舞昆布の加工品歯舞昆布特有の豊味を利用した加工製品も数多く、自然味あふれる味わいと手間ひまを惜しまない職人の技が、全国の食通をうならせています。